ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。
NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)評議員

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

なぎさの向こうに。(2)

月日の流れと共に、私達の集めるゴミの種類・場所も変化していった。

本来そこにないはずの漂着物が視界に入らなくなった街並みは歩いていても、見ていても気持ちがいい。

一年の節目を過ぎ、ようやく私達の役目も一通りの役目を全うし、その作業の手を下していいのではないかと感じるに至った。

あの状況を見て、とりあえず「今、自分達がやるべきこと」は1年2ヶ月という期間の中で、その役目を一定の範囲で果たせたものと自負している。

 

この水辺の清掃活動も最近ではゴミを拾う場所も人様の私有地以外はほとんどなくなり、昨年を中心に私達がゴミを拾い集めた土手沿いの中には、現在多くの工事に携わる方々が懸命に作業に励んでいらっしゃる。

 

この長浜海岸の右隣には「石巻魚市場」がある。

かつての石巻魚市場は津波で被災し、取り壊され更地に。現在はかさ上げ復旧工事が進んでいる。津波で建屋が被災し、現在は取り壊して地盤が著しく沈んだ分の“かさ上げ工事”をおこなってから、再び建物を建築するようだ。

地盤沈下は深刻な問題で、潮位の干満やちょっと雨が降っただけでも水が道路まであがってくるから大変だ。

 

 

 

水中に沈む道路にガードレール。かつての車道は地盤沈下で今や水の下に。ご覧のように、このあたりでは、かつて車が走っていた車道(道路)は今や水の下にある。

地盤そのものが大きく沈んでしまったぶん、土を盛り周囲かさ上げすることで、水の侵入を防ごうというわけだ。

 

先日の「海の日」にちなみ、この日は午前9時から午後3時まで水辺の清掃活動・最終作戦をいよいよ海辺に移しておこなってきた。

津波で壊れた水門周りの柵。

 

 

 

 

 

 

 

宮城県石巻市長浜海岸。

この砂浜は本来であれば海水浴場として多くの人々の笑顔に満ち溢れていた場所。サーファーも多かったし、釣り人も多かった。

投げ釣りならイシガレイやマコガレイ、イシモチ(ニベ)などが狙え、ルアー釣りではマゴチやヒラメが釣れる。時には巨大なアカエイが掛かって釣り人を驚かせる。又、沖からカタクチイワシの大群が入ってくれば、稀にシーバスや青物(ワカシ=ブリの幼魚やショゴあるいはシオ=カンパチの幼魚)が掛かることもあった。

 

ここは私が中学時代からコチ(マゴチ)釣りに通っていた場所でもある。17年前から付き合いのある海だ。それだけに個人的にも思い入れが強い場所だった。

海岸の堤防はとてつもない地震の揺れで崩れ落ち、後に来た津波の影響と思われる力でバラバラになっている。

階段の下は写真の通り、基礎の土台がむき出しになったままだ。

堤防の階段は崩れたまま。崩れた階段は今も衝撃の大きさを物語っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下の写真(↓)は長浜海岸の右隣にあった赤灯台防波堤。中間部分が津波で破壊され、流失。元々はL字型の防波堤だったはずが、今は沖堤のように見える。

かつてL字型の防波堤は津波で中間部分が決壊し、沖堤のようになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

ちょうどL字型になっていた防波堤の内側から石巻漁港側(魚市場側)に投げると、夜釣りでハモが良く釣れたものだ。

三陸でハモと呼んでいる魚は京料理でお馴染みのハモ(←こちらが本家本物です)と同種ではなく実はアナゴのこと。魚が全く違う。真正のハモは温暖な西日本の海で獲れる魚だ。だから、このあたりにはいない。

遡ること7年前、私が北海道に釣りに行きだすまでは、てっきり三陸だけで通じる地方名かと思いきや函館~室蘭にかけての道南方面でもアナゴのことをハモと呼ぶことを知った時には海を渡った土地でも聞き慣れた言葉を耳にし妙にうれしくなったものだ。

 昔話で恐縮だが私の高校時代は夏休みに、それまではバス釣りしかやったことのない“海釣りビギナー”の同級生達を引き連れ、ハモの夜釣りを教えたのもこの防波堤だった。エサはサンマの切り身を使う。当時はバス釣り全盛期。空前のバス・バブルが到来していた年代だ。ルアーじゃなきゃ釣りじゃないよ的な誤った風潮が若者の間ではあったが、私はそれは違うと思った。釣りそのものに楽しめる要素、つまりゲーム性があるならば針に付けるものがルアーであろうがエサであろうがそんなのは関係ねぇんだ!と彼らに向かって説いたものだ。現に、ハモを釣る際は投げ竿を使うのがイヤならバス用スピニングロッドの少し硬いものを投げ竿代わりにしてもOKだよと説明していた。

基本、野池や沼でバスしか釣ったことのない彼らにバス以上の大きさな魚を釣らせ、その魚の大きさに驚いてもらいたいと私は強く思った。なので、まずは朝イチはシーバスのルアー釣り、昼間は砂浜でマゴチ・ヒラメを釣らせ、夜はサンマの切り身を付けた佐藤特性ヘビキャロ仕掛けでハモ釣り。朝昼晩“徹底的”に釣り三昧に連行(←“おもてなし”とも言う)した。

が、夜釣りにも関わらず、時々マゴチが掛かることがあり、ハモ(アナゴ)釣りの外道とはいえサンマの切り身をセットした仕掛けに掛かってくるマゴチはワームやメタルジグで釣れるものよりも大きな個体ばかりだったのも不思議だった。小さくても50cm。大きなものでは60cm超だから、「結局のところルアーって人が人の目線で作った世界観の物で、疑似餌の域を出ないのか…。やっぱサイズ狙いでは本物の生エサには勝てないのか…」と若き日の私はルアー釣りの長所と短所の本質をサンマの切り身から学んだ気がした(笑)。

ちなみにハモ釣りは、サンマの切り身のカットの仕方・大きさ・鮮度で釣果に差が出ることはちょっとした秘密。

勿論、サンマはまるごと1尾を買ってきてハモ釣り専用のエサ仕様として捌く。

いろいろコツがあるんです。

月日は流れ、今では「特定の条件下では生エサ以上に釣れると思えるワーム」も世の中には普通に存在する時代になった。

あの年代はそんなワームがこの先の未来に発売されるなんて夢にも思わなかったが……当時、そんなことを想ってルアー竿と投げ竿をこの海で両方振り回していた自分をふと思い出し、なんだか無性に懐かしくなった―。

 

話を戻して続けると、長浜海岸の土手には山積みされた大量のガレキがある。

海岸の堤防に山積みされた大量のガレキ。

 

 

 

 

 

 

 

これが2012年7月の現在の風景だ。

これがこの場所の、【今】なのだ。

2011.3.11―。

残念極まりない事実だが、あの日、あの瞬間から状況はすっかり変わってしまった。

 

次回へ続く。