ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。
NPO法人ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)評議員

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

厳寒な日々に春の息吹を感じるとき。

今週末は宮城県内も降雪の銀世界に。

今年の冬は例年以上に雪が多いから、余計に北国の冬らしさを感じる。

それでも自然界では命芽吹く季節へと向けて、着実に動き出している。

卵を持ち、少し腹が膨らんできたメスのクロソイ。スポーニングの準備段階です。先日は宮城県塩釜市へ。

先々週、地球丸「SALT WATER」誌の取材 で松島湾のクロソイ釣りを当初は予定していたのだが、前日から降り続いた雨と風により湾内はグチャグチャに濁ってしまったことから、アベレージサイズは下がるものの急遽、仙台湾沖の水深40mラインのディープエリアまで船を進めることになり、当日はその場所での取材を終始余儀なくされた。あいにくの悪天だったが個人的には凄く面白かった。その際、お世話になった船長から「佐藤さん、この釣りは2月一杯までは楽しめますから、またぜひお越し下さい。」とお声をかけて頂いた。

この日はたまたま身内で人数が揃ったため、先々週にやれなかった松島湾のクロソイ狙い(一度はやってみたかったので)で塩釜港に隣接する貞山運河の出船場所を訪れた。

本当は終日徹底してやれれれば良いのだが、あいにく私の都合が一杯一杯のため、午前中だけ無理やり時間を空けて釣行した次第。季節柄、ワカサギ釣りやサクラマス狙いに行く人はあっても例年5月のGW過ぎから本格的になる“海釣りシーズン最盛期”に比べれば今時期はどうしても釣りに行く人は少ないものの、業界(メーカー)にとっては逆にバタバタする忙しい時期なのだ。

 予報ではお昼から強風となり10m以上の風が吹き荒れる模様。この風だと、どのみち午後は危険なため釣りにならないというから、勝負は午前中の出来るだけ早い段階に決めるしかなさそうだ。朝7時、本命ポイントである松島湾内の水深10mラインのシャロー(※当地におけるオフショアからのクロソイ狙いにとってはシャローという意味)に到着。船長含め、5人で一斉に釣りをスタートするものの、しばらくしても何もアタリない。全員、完全に無反応。

「魚探(魚群探知機)にもクロソイの反応は全然出てないですね」と船長の表情は渋い。「佐藤さん、このままここで粘ってもおろらくダメだと思います。この場所ではちょっと時期がもう遅いかもしれません。先日の取材でやった沖の深場まで少し走りませんか?」と提案を受ける。昼から強風が吹く予報だが、今なら行って帰ってくるまでの間でなんとか釣りになる、との船長判断だ。

一応、私一人で来ているわけではないため、同行メンバー達に「どうする?」と聞いてみると、皆「仮に小さくても少しでも釣れる確率の高い場所でやりたい」とのこと。松島湾の浅瀬で釣れるクロソイは50cm前後(ただし季節限定らしい)がアベレージサイズらしく、それに比べてしまうと深場のポイントで釣れるのは35~40cm前後のサイズが多くなってしまうが、世間一般的に(全国平均的に)普通に考えてみれば40cmのソイなら十分立派なサイズだ。それに魚数はある程度まとまっている場所なので、数を釣っている段階で時にビッグワンが混じればなおよし、という展開だ。

そこで、ここから30分以上は掛かるが一気に松島湾を抜けて仙台湾沖の水深45m前後のポイントまで走る。当然、この水深になるとメインラインがフロロカーボンでは着底が分かりづらいだけでなく、リグの操作性が落ちるため、万が一の予備として持ち込んでおいた1.5号のPEラインが巻いてあるリールにセットし直す。

水温は5℃~6℃台と相変わらず低いが、前回来た感じの様子だとクロソイ達はエサは追っている状況。事実、先々週の取材の時もそうだったのだがクロソイが喰ってくるレンジは完全なるボトムではなく、ボトムから少し離した5m以内のレンジに集中している。船長の話では、時にはそれ以上も上のレンジで喰ってくることもあるとのことで、深場に関しては日中でも底から少し浮いた状態でサスペンドしていることがうかがい知れる。

そこで今回は、少しでもヤル気のある魚を早い段階で探しながら喰わすべく、多少なりとも魚の方からもルアーを追ってもらおうとシャッドテール系シェイプで、いくぶん波動の強いものをファーストチョイス。この類のルアーはスイミング(泳がす)させることで初めて動きが出るため、著しく活性が低い場合など魚のコンディションによってはひどく嫌う場合(※近くをルアーが通っても無視する)もあるが、事実、ここで釣れてくるクロソイ達の中には幸いにもカタクチイワシを食べている個体もいる。ということは、少なからず捕食のために魚自身が自ら動いてエサを喰っている(喰いに行く)証拠である。

ということで先述した状況を考えパワーベイト・パワーゴビー4”からまずは投入していく。シャッドテール系ワームはパルスワームなどのようなカーリーテール系やガルプ!ジギンググラブのようなグラブ系とは水との絡み方が異なるため、左右へのテール反復運動で水を蹴ってしまうがゆえに局所的に強い動きは出せるが“動きの質”が全体的に「硬い」のが特徴。

それゆえ、フォールスピードもカーリーテール系ワームよりも早く、リグの滞空時間もやや短くなってしまう。早い展開の釣りでは喰い気のある魚を見つけるのにはいいが、そうでない場合にはシャッドテール系タイプのルアーにはあまり良い反応は出ない場合もあるので、“次の一手”(ルアーローテーション)を決めるための消去法の大きな判断基準にもなることを皆さん、ぜひ覚えておいていただければと思う。

リグはテキサスリグでOKだが、シンカーはタングステン1.2ozにする。底取りは1.5ozの方が楽でいいが、1.5ozに上げることでフォールスピードもより速くなり、結果クロソイにルアーを咥えさせるための間合いが若干短くなってしまうデメリットもあったからだ。ボトムにルアーがついた状態が長いとクロソイよりもアイナメの方がヒット率が上昇してしまうこともぜひ知っておいてほしい。

釣り方はまずは真下にリグを落とし、大きなストロークでリフト幅の広いリフト&フォールで時々、段階的にシェイクを入れて水中にあるルアーをヘコヘコさせて一瞬でもいいからリグを水平にさせるイメージ。これは私独自の誘い方における小技の一つだが、大まかな流れとしてはリグのフォーリング中にクロソイにバイトさせる狙い方には違いない。

タイミングによってはダブルヒット、トリプルヒットもありました。

キャスティング動作はないだけに、一見、地味で退屈そうに思われる釣り方かもしれないが、深場をバーチカルに狙う釣りはシャローとは比較にならないほど「イマジネーション力」が求められる。水深40mラインの海底にある自分のルアーをいかに操作出来るか、どう動かすか、だ。そういう意味では知られざる水中世界をイメージ出来るか否かの違い(差)は大きい。何よりそれが一人ひとりの釣果という形で結果が表れてしまう。

しばらく釣り続けていくと、船長にヒット。続いて同行のS君、自分にも立て続けてヒットが続く。私が釣り上げたクロソイの口からはカタクチイワシが、船長が釣り上げた個体からはエビが、S君のクロソイはカニを吐き出した。魚達はこの低水温下においてもエサは追っているわけだから、食い気の出るタイミングで目の前を通してやればバイトを誘発出来る。

この日は船長含む5人で船中15本のクロソイと数本のアイナメが釣れたが、その1/3の割合のクロソイ(特に40cm前後の魚)は抱卵しており腹が膨れ、釣り上げると事実、卵がこぼれてくる個体が中にはいた。

水温は低いが、深場ではアイナメも元気!東北以南の人には信じられないかもしれないが、それこそ道内の5月~6月は日本海側も太平洋側も抱卵したクロソイの親魚が仔魚を放つために沿岸の浅場まで岸寄りしてくるため、オカッパリからでも場所によっては60cmオーバーのクロソイが出る場所もある。浅瀬でヒットするクロソイの60cm超えといったら、パワーも迫力もアイナメの60cmの比ではないことは誰もが想像に難はないだろう。こういう環境が残されている場所って本当に凄いことだと思うし、皆で大事にしていきたいと思う。

その一方で宮城県沿岸において産卵絡みのクロソイ(つまり抱卵魚)を私はこれまで一度も釣ったことがなかったから、地元の海では長年ずっとどこで産卵しているのか、どのタイミングでクロソイが仔魚を放つのか全く持って不思議で仕方なかったものの、ようやくその長年抱き続けてきた疑問が次のステップへと繋がる瞬間に立ち会えただけに今回得られた収穫はとても大きかった。

自分でもこの海ではプリスポーンのクロソイだけは釣ったことがなかったし、宮城県沿岸でのオカッパリでは抱卵したクロソイが釣り上げられたケースはこれまで一度も耳にしたことがなかった。2月下旬の現段階、卵の成熟具合からして稚魚が孵り、親魚が放つのは4月中旬~下旬くらい、あるいは早い個体であれば3月末~4月上旬頃、遅い個体では5月上旬頃(多少前後するケースもあると思われる)であることは確かだ。

万全の防寒対策のもと、皆さんも元気なクロソイ達に会いに行ってみて下さい。まさに当地(石巻湾~仙台湾にかけて)雪代が出る時期であり、北上川水系下流域のサクラマスがピークを迎えている頃である。又、河川にシーバスが入り出す時期であり、淡水のバスもスポーニング絡みの大物が出る時期。

どのみち、こういった個体が水深40mラインでヒットしているということは、シャローへ乗っ込むといってもせいぜい20~30mラインがいいところかもしれない。つまり、宮城県沿岸域における通常のオカッパリ射程距離内にある水深(10m未満。深くても13~15m前後)の水深までは抱卵したクロソイの親魚達はなかなか寄って来にくい=岸からは釣れないという事例(一種の定説)に繋がっていたわけだ。

岸釣りだけではどうしても見えない次元、見えてこない次元もオフショアの釣りを通して初めて分かる事例って沢山ありますよね。

釣りの世界に「絶対」はないが、これだけは確実に断言出来る。

なつかしのガルプ!ミノーワーム7インチでも連発。ロックフィッシュゲームというものを真の意味で追及していくためには防波堤・沖堤・地磯・沖磯・ボート…この釣りで考えられる全てのシチュエーションに足を運ばなくてはなりません。

 

要は自分の得意なシチュエーション一点集中型ということでなく、どんなシチュエーションに遭遇しても総合的な釣果を引き出せる安定力が求められます。

厳寒期―。誰もが海から遠ざかりがちなこの季節において、春の訪れといち早い根魚達の季節サイクルを実感出来た、貴重な釣行となりました。

「寒くて釣れる魚いないよ~」とか「今時期は釣りモノがなくて退屈だ…」とお嘆きの当地のロックフィッシャーの皆さん!

天気の良い日、ナギの良い日には“ちょい深”ロックにぜひお出掛け下さい。

仙台湾にも何気に豊富にいるクロソイ達の“つく場所”と“釣り方”が分かってきた以上、深場は浅場と違って水温も比較的安定気味に推移するはずなので、雪代が出るまでの期間であれば徹底してやれば3月に入っても狙えるはず。

シャローの釣りとはまた異なる、ディープロックの世界。

これはこれでまた趣の異なる楽しみ方がある釣りモノだと思います。

今後の更なる発展が楽しみなスタイルですね。

 

タックルデータ

■ベイトタックル<テキサスリグ>

●ロッド:シューティンウェイSWC-722EXHブラインドサイト

●リール:レボエリートIBHS

●ライン:シーガー バトルJライト(PE)1.5号

●リーダー:シーガーショックリーダープレミアムマックス20lb

●シンカー:タングステン1.2oz

●クッションビーズ:オーナー 夜光ビーズソフト原色4号

●フック:岩礁カウンターロック3/0、2/0

●ルアー:ガルプ!ミノーワーム7”、パワーベイト・パワーゴビー4”

     ガルプ!ジギンググラブ4”、ガルプSWパルスワーム4”

     ガルプSWダブルウェーブ3”

 

■スピニングタックル<ひとつテンヤ>

●ロッド:シューティンウェイSWS-702Lスイミントレーサー

●リール:ステラ4000S

●ライン:シーガーテンヤ(PE)1号

●リーダー:シーガーショックリーダープレミアムマックス20lb

●テンヤ:5号~8号

●ルアー:ガルプSWダブルウェーブ3”

 

●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq

●偏光レンズ:TALEXアクションコパー

 

★宮城県仙台湾ルアー・ガイド船<塩釜地区>

MARINE FISHING CLUB (加藤船長 )【受付番号090-6790-9868】