ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

仙台湾のワラサジギング(1)

日本にはマグロ水揚げ基地となる主要港がいくつかある。

その中でも東の有名所は宮城県塩釜港が名高い。この日はそんな塩釜港より仙台湾沖に繰り出しワラサを狙った。

マグロ水揚げ基地として有名な宮城県塩釜港。夜明け前の早朝から、マグロのセリが行われていた。早朝。夜明け前の塩釜港には煌々と照明が照らされ、水揚げされたマグロのセリがおこなわれていた。

港町の朝は、やっぱりこうでなくっちゃ。

威勢のいい、仲買人達の声がこだまする。

朝焼けの松島湾を疾走した船は、速度を上げながら一気に仙台湾沖、水深50m前後の大規模な砂地エリアを目指す。

塩釜港を出港し、日本三景の一つに数えられる松島湾を疾走する。さぁ、今日も海の1日の始まりだ!ボトムにはワラサのお目当てとなるベイトフィッシュ「メロウド(※正式名称はイカナゴ。東北太平洋側~北関東ではイカナゴの成魚をメロウドという地方名で呼ぶ)」の群れが湧き、それを狙って例年、秋にはワラサの大フィーバーが巻き起こるのだ。この時期ばかりは腕が痛くなるほどガンガンに釣れまくる。

仙台湾でのワラサの釣期はおおよそ9月~11月で、時期が遅くなるに従い数もサイズも下がっていく一方だが今秋は水温降下が遅れていたために、つい最近12月上旬までは場所によっては釣れ続けていた。が、やはりピークとなる9月中旬~10月中旬の1ヵ月間は特に熱い。今年はワラサの一番釣れ盛っているタイミングでデビューしたてのシューティンウェイの入荷&出荷業務や北海道出張、著書の執筆追い込みが重なり、ジギング最盛期とはいえ1日空ける余裕など全くもってない状況だったのが残念だった。ちょうど牡鹿半島沖~女川町の江島沖でブリ級が釣れていたというのもその頃。ただし、ブリ級を狙うには完全なる砂地というよりはボトムに根が絡んでいることや、ベイトフィッシュの種類とエリアが異なっている場所もあったため、ワラサの数釣りをするか、一発ブリ級に狙いを絞るかでは同じ仙台湾とはいえポイントの行先も少し違うのも事実であった。

さて、晩秋~冬のロックフィッシュ最盛期に入ると同時に当地での青物シーズンは終盤を迎えた頃、ようやく1日確保しシャクリに出掛けることが出来た。

重要工業港である仙台港が近いことから、松島湾沖に出ると様々な種類の船とも出くわす。今年は例年以上に太平洋側はワラサが湧いた。震災以降、千葉県沖で春先から大量にワラサが回遊し、それを知った釣り人達で賑わった。その勢いは留まることなく群れが北上し、7月から既に宮城県沿岸ではワラサが釣れていた。

ただ、とき同じくして7月の牡鹿半島では例年になくベッコウゾイが大フィーバーしたり、仙台湾にもシイラの群れが早いタイミングで来遊していたため、「どうせ今からの季節は更に釣れるようになるだろう」と多くの釣り人はワラサのジギングまで手が及ばなかった部分もあるだろう。普通に考えれば、釣る魚が多くて全部に手が回らないなんて贅沢な話である。

一方、ワラサ達は北上を続け岩手県~青森県沿岸を経由し、北海道太平洋側へも到達。北海道ではブリの幼魚(主に関東で言うワカシやイナダ級のこと)を北陸地方同様「フクラギ」と呼び、その後は全部ブリという名で統一される。つまり2、3キロであろうが、10キロを超えていようが全部ブリと呼ぶ人が大半だから(本来、2キロ、3キロの魚はブリとは称されない)本州から現地に赴くと、一体どのサイズのことを言っているのかの断定は実のところ難しい。よって、出世魚としては一般に広く知られる関東でいうワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西で言うツバス→ハマチ→メジロ→ブリというような表現は北海道には存在しない。

ちなみに宮城県の地方表現ではワカシやイナダ級のことをひとまとめにアオッコ(青っ子)と呼ぶ人も多く(主に浜言葉・漁師言葉)、その後はワラサ→ブリと続く。しかし近年の関東~東北では誰が最初に言い始めたかは定かではないが、イナダとワラサの中間サイズ(55cm前後の微妙なサイズ)を“イナワラ”と呼ぶ人が増えたことは記憶に新しい。

松島湾沖の日の出。1日のうちでも最も太陽が神々しい光を放つとき。それから、北海道のブリ釣り場と言えば従来から津軽海峡に面した道南エリアや日本海側の積丹半島が有名だが、今年に限っては本来、回遊魚の来遊が少ない室蘭・白老・苫小牧といった道央太平洋側でも回遊魚の来遊が相次いだ。

苫小牧港内ではカンパチの幼魚(主に西日本では“シオ”や“ショゴ”とも称される)のナブラが発生し道内で話題になったり、苫小牧ボートロックではアイナメ・ソイを狙っている船でジグヘッドワームに異例のマダイが喰ってきた事例(※本来、北海道では水温の関係上マダイは獲れないとされる)も報告されている。

今年10月上旬に私が北海道へ取材に行った際にも、「ロックフィッシュ地獄Ⅶ」の撮影中に室蘭沖堤で目の前で50~60cm級のイナワラ・ワラサの凄まじいボイルが起こり実際にロックフィッシュベイトタックル(シューティンウェイSWC-802EXHスキップラン)のテキサスリグをそのままナブラ目がけてキャストして1本掛けているし、その数日後にはノースアングラーズ取材で苫小牧沖でのボートロックの最中には移動中にワカシ~イナダ級(道内で言うフクラギ)のナブラに遭遇した際には当日共演したボイジャー船長・安瀬君からその場で借りた36gのメタルジグをシューティンウェイSWS-702Lスイミントレーサーのままキャストし(←アイナメ釣り中に突如ナブラが発生したため急遽そのまま代用したのであって、メーカー的には本来推奨していませんのでご注意願います)短時間で船中4尾キャッチしている。(※ノースアングラーズ2011年12月号「ボートロック最前線」参照)

つまり北海道太平洋側まで到達した個体群は南からの黒潮に乗り、関東近海を通過後、東北太平洋側に達し、更にそこから北へ向けて北上を続けて行った個体群だと思われる。

ベイトフィッシュ量そのものも多かったことも手伝い、今年は全国的に回遊魚の魚影が多かったのだ。さすがに現地での取材中にブリ族と出くわした時には、北海道に来てまで青物を深追いする気はなかったのが正直なところだが、まさか道央太平洋側地区でブリ族の魚と“ここでも遭遇”するとは私も思っても見なかった―。