ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

拝啓、六月(みなづき)の貴女へ。~6月1日のサクラマス物語~

今日から6月。

旧暦でいう、水無月(みなづき)です。

①

水の無い月と書きますが、無は「の」という称になるため、水無月は『水の月』という意味。

 

夏野菜や米。

田畑が水を欲する、祈雨(きう)の季節。

 

そう、間もなく迫る梅雨への移ろい、という含みをも先人は考えていたのかもしれません。

言葉に込められた深い意味ってすごいなぁ、と考えてしまいます。

 

今日は月初めに訪れた、朝の静寂を突き破る情熱の“サクラ”話。

 

 

 

拝啓

水無月の貴女へ。

 

 

6月1日の今朝。

②

③

出勤前の短時間釣行に繰り出し、うれしい対面を果たすことができました。

朝の、ほんのわずかな時間。

静寂に包まれた閑散とした水辺はシトシトと雨に打たれ、緑生い茂る生き物の世界でした。

 

静けさと川の流れに身を寄せて、己と貴女に向き合う幸せの時間です。

 

 

④

水無月桜。

⑤

気品に満ちた彼女の名は、桜鱒(サクラマス)。

 

 

貴女のことが好きで好きで堪らなくって、心の髄まで虜にされること私も早25年になりました。

 

いつしか見た本の世界で貴女の存在を知り、憧れ、その姿をこの目で、一目でいいから見たくて足を運んだ小学4年生の頃。

初めて振り向いてくれたのは私が高校を卒業した春、18歳のことでした。

 

⑥

赤い糸に、願い託して。

そして今日もまた優しく微笑んでくれた。

 

 

私も来月で36歳を迎える年齢になってしまいました。

若々しいはずのこの肉体も、近頃は髪の毛に白い毛が混じるようにもなってきてしまい、どこか老いを恐れる苦痛をときに抱いてしまいます。

 

【少年老いやすく(しょうねんおいやすく)、学成り難し(がくなりがたし)。】

 

気づけば…私もずいぶんと月日の流れを重ねてしまったものですね。

時にはそのことに愕然としてしまうこともあります。

だけど、それもまた少しずつ理解し、受け入れていこうと“許す”考えです。

 

それでもー。

それでも、貴女は永遠の憧れ。

時代がどんなに変わっても、貴女は今も特別な特別な愛しい存在です。

 

(略)

 

敬具

 

 

「水の月」の“初めの今日”は、とてもうれしい日になりました。

サクラマスに恋した男子の、それはまるで永久恋愛のようなたわ事(片想い)を清々しい気持ちをもって文面に書き起こしてみました(笑)。

 

 

川を去る際、ありがとうの気持ちを込めて一礼してきました。

迫る時間。

まさに後ろ髪引かれる思いで川を後にしました。

 

 

このうれしさは後からじわっとまた湧いてくるもの。

まさに今、そんな心境です。

⑦

雪色濃い土地には今もこうしてサクラマスという名のヤマメが存在しています。

それはそれは大きなヤマメで、海を旅してきた証の姿。

この魚がいかに特別かは、魚釣りの世界に飛び込んでみればいずれ分かることでしょう。

 

情熱はいつも報われない。

しかし来たるべき歓喜の瞬間を感動を求めて私たちはいつも夢をみているのです。

 

(サクラマスを)望む、望まない、は人それぞれ。

ですが、私たちサケマスと釣りを通して関わる人間にとっては垂涎の存在なんです、よね!

未来に向けて今日もまた一想い(ひとおもい)に竿を振り続ける。

 

 

水の旅人・サクラマスが泳ぐ海や川や渓に想い馳せ、夏の風を肌身で感じた6月の夜明けのことでした。

北上の大河を遡る、悠久の歴史。

今日もまたその出会いに感謝です!