ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

ロックトランジットを携えて。四国・瀬戸内キジハタゲーム(5)

「うわぁ! デカイっ!!」

深夜ー。

夜の港に歓喜が響き渡ります。

 

なんと!

①

これは凄いっ!!

大物キジハタが出現!!

②

シューティンウェイSWC-802EXH“スキップラン”で、ブチ抜きです。

③

素晴らしい大物です!!

 

深夜の衝撃。

いやぁ~、びっくりしますね。

このような大きなキジハタが!

それも港から釣れる可能性があるのですから、瀬戸内海もまた凄い海です。

 

さすが地元エキスパート!

おめでとうございます!

 

数が釣れない希少な魚ほど1尾の大物はその場のみんなで共有できる喜びがあります。

そんなうれしさに浸りつつ、また皆がバラけて各々の立ち位置に戻ってほどなく…「来たぁ~!!」とまたもや歓喜の声が!

「ネット!ネット!」と誰かの声がかすかに聞こえてきます。

………何が起こっているんでしょうか。

夜の港、広く散って釣りをしているので声だけでしか様子が分かりません。

 

「佐藤さん、こっちもデカイですよ~」と登場したのは迫力の40cm!

④

出たぁ~、またもや40UPのキジハタ!!

先程のはベイトタックルでの釣果に対し、今度はロングスピンでの釣果。

軽量リグを遠投して大物を仕留める。

レバーブレーキリールを駆使しての痛快なファイトだった、とのことです。

メジナやクロダイなど磯のフカセ釣りで主体のレバーブレーキ付きスピニングリールですが、海のルアー釣り界ではシーバスフィッシングで確立されたこともあり今日ではレバーブレーキ付スピニングリールはソルトルアーアングラー層でもずいぶんと認知が進みました。

実際に使用されている方も多いことと思います。

他にも近年ではエギングで実験導入されたり、川の流れの中をグネグネと首振り伴うローリングファイトすることでバレも多いサクラマスゲームでも導入するアングラーがいたりとか、少しずついろいろな釣りジャンルに対しても注目されてくるようになりました。

糸の放出を瞬時にON/OFF切り替えられることでラインでのテンションを一定に保ちやすくバラシを減らせる効果が上がったり、足元の突っ込みもうまく回避できるというメリットは、ロックフィッシュゲームの世界でも今後もっと開けてくる可能性も秘めていますね。

⑤

それにしても相変わらず、ロングスピンの効果は目を見張るものがあります。

アイナメゲーム、ソイゲームのみならず、ハタゲームでもメリット際立つロングスピン釣法。

この威力を実際のフィールドで知れば知るほどに分かるのですが、確かに全国規模で浸透していくわけですよね。

単純に飛距離に特化するに限らず、そもそもベイトリールのキャスティングが苦手…という方にもこの釣りを楽しむことが出来る釣り方です。

⑤b

ロックフィッシュゲームの世界も、スピニングタックルの釣りもベイトタックル同様に攻撃的な釣りへと変わった現在。

もちろん、私にとっても今では欠かせない釣り方のひとつになりました。

 

 

本日2尾目の40UPキジハタの出現。

俄然、やる気が高まります!

 

そして…私にも一度、カサゴらしき極小のアタリがあったものの明らかに掛かるような感じがなかったのでこのアタリはそのまま見送り。

その後のことでした。

 

私の考えとしては、「水の中では浮遊させた状態でワームを水平くらいの位置でホールドさせていたい」。

だけど今は潮止まりで潮は動いていないから、フォールスピードが速くなり過ぎないように軽いシンカーを使いたいわけですが、今宵私が使用しているRTC-922EXH“ロングベイトキャスター92”の場合には下限で11gのキャストに対応できますが、さすがに7g以下のウェイトまで下がると11gを使うほどには遠投はしにくくなるから、そうなると今必要な望みの飛距離には達しにくい。

最初は7gシンカーで頑張っていたのですが、7gでも投げれることは投げれるのですが、飛距離的に周囲のロングスピンを用いている皆さんとは着水地点が違い過ぎる。

今宵キジハタが掛かっているのはブレイクの向こう側の急に深くなっているところ。

だから最も簡単な方法は私もロングスピンに重点を置いた釣りに切り替えればもしかするとたちまち釣果の面は解消されるのかもしれませんが、そうなると今回の主目的が遂行出来ないからベイトの剛竿で今夜は押し通す必要もこの日の自分にはあったのです。

そこでシンカーは思いきってタングステン7gバレットシンカーからタングステン14gに上げたかわりにライトテキサスからダウンショットリグにチェンジ。

そして、浮力の高い素材のワームをセレクトすることでシンカーは着低していてもリーダーの長さの分、ワームはボトムにつかないから、ワームをサスペンド状態で誘える。

そう思いまして。

 

あとはワームにも自力で水平姿勢を保つための「浮力」もほしかったんです。

そこでロックフィッシュ用ではないのですが、ヒラメ用の浮力の強いワームをこのタイミングでは投入することにしました。

そこでセレクトしたのは熱砂のドルフィンキッカー4”、上下にテールが動くタイプのシャッドテールワームです。

テールの動き方が普通のシャッドテールの逆なのも珍しいですが、それだけでなくてこのワームは浮力が大きいためダウンショットリグのワーム水平維持効果と相まって、14gシンカーのダウンショットリグであってもワームを底ベタにしないで済むというところも考えです。

狙いのキジハタが今、小魚を捕食しているかどうかは分からないのですが、水中でのワームの姿勢で考えれば「今はこれがいけるな…」とにらみ、投入したのがまさに正解だったようで、そう時間を待たずして“ガツッ!”とキジハタのバイトを察知したのです。

アワセが決まり、「よ~し、来たぁ~」とゴリ巻きして魚をブチ抜いたら足元でキジハタの口から針がポロッと外れてそのままナチュラルリリース。

あらま…夜の暗い海にポチャンとキジハタが対面ままならずの間に戻って行ってしまいました。

 

30cmちょっとくらいの大きさだったので、魚が小さ過ぎるわけでもなく、個人的にはけっこううれしかったのですが、まぁ~やってしまったと!(笑)。

隣で竿を振っていた堀川さんには見られてしまいましたので、とりあえず笑ってやり過します(爆)。

もしかして今の魚が最初で最後かもしれない…と思う気持ちと同時にに、いや待てよ…もう一発次があるかもしれない、という不思議な気持ちも湧いてきて両方が混じりあう感じに。

なので、心を鎮めようとまずは落ち着いてタックルをチェックすることにしました。

 

ちょうど、リーダーに細かい傷が入っていたので結び直すことに。

結構、捨石のあるところを重点的に釣っているので細かい傷はラインの表面だけですが入っていたのですが知っての通りシーガーのフロロはとにかく強いですから、このくらいの傷であればこれが原因で切れるまでとはいかないまでも、万が一ということを考えれば面倒がらずにリーダーも結び直しに取りかかります。

今夜はキジハタの大物を2尾も見ていますので知らず知らずに何気に興奮が高まってきてはいるのですが、ここで焦っても結局のところはダメなんですよね。

だから、糸を結び直す時間は心を落ち着かせるためにも役立つ必要時間。

ちょっとした不安も時には次の一手で大きなダメージにつながってしまうこともあるからラインチェック、リーダー交換、針の交換と、眠気が増してきた夜中の時間をうまくかわしつつ、黙々と道具の再チェックです。

 

すると、「来たぁ~!」とまたもやキジハタがお出ましに!

「ようやく釣れました~。」

⑥

おめでとうございます!

ロングスピン、もはや【安定のロングスピン】と言っても過言ではない領域です。

 

みんなで1尾を引っ張り出すのがやっとかもしれない…というほどに非常にタフだとのキジハタ前情報からは思いもよらぬ、今夜は好釣果に好転。

キジハタ劇場、6名中5名の方が見事キャッチされる上昇展開。

さすが全国に名が知れ渡るキジハタ釣りの名所・瀬戸内海です。

あとは釣っていないのは私だけです。

 

「俺にも釣れるのかなぁ~」と自問自答しつつ、夜明けが来るまで「なんとかしたい」このもどかしい気持ち。

ですが、あるときには“釣れない釣りの代名詞”とも称されることがあるサクラマスの釣りで自分はこういう場面は20年以上も経験していて慣れっこですから、伊達な根魚釣師これくらいでは動じません(笑)。

 

「皆さんのこの勢いに乗って、私もなんとか一匹釣らせてください瀬戸内の神様!」と心の中でお願いしつつ、大きく深呼吸。

 

タックルは万全。

ラインの心配はなし、リーダーもOK。

ロッドとリールの心配もなし。

ワームも、シンカーも、フックも、もうこれに決めました。

あとは変えないつもりです。

 

潮の流れに変化が出てきたことを夜間対応偏向グラス・TALEXモアイブラウン越しに目視していたことで確信しました。

目指したのは、潮の流れるスピードに合わせたリギング。

そこでまずはダウンショットからライトテキサスに戻しました。

この場所は沖の砂地だけでなく手前側にある捨石の上も引いてくるから、根がかりにも強いテキサスリグが今この状況でならフルに活かせること。でも、テキサスリグだと縦の動きが強調されてしまうからシンカーは軽いものにしてナチュラルドリフトで流せる重さが重要。横の動きを出したいがために、です。

そのためには全身で水受けするワーム形状でありつつも、テールもヒラヒラと舞うものが好ましい。

水を蹴る動きではなくて、水を受けて流すタイプですね。そうなるとグラブやカーリーテールは抜群に使い勝手が良い。

あとは、目視できる範囲にいるキジハタのエサとなりうる生き物であるシャコエビとアオリイカのどちらでも化けてくれるように配慮したワーム形状……そうなるとパルスワームならうってつけの形状です。

魚の襲撃目標となるバイトマーカーにはロックンビーズソフトをライトで照らして蓄光して光らせます。

シンカーは、飛ばすためにある程度の重さは必要だけど、低比重のため沈むのは遅くスローフォールさせるためのブラスシンカー。タングステンよりも沈みの遅さは時と場合により長所になります。

剛竿と共にPEライン2号で強引に引っ張り合いしても負けない針強度とスムーズな針掛かり。

キジハタの引きは強烈だからと言って、ただ太いだけの針ではダメなので、アタリを拾える針先を備えたものでなくてはいけません。

 

今、考えられる“自分の中でのゴールデンバランス”で組み合わせたセッティング。

ライトテキサスfor瀬戸内キジハタ

リグはこれです。

ワームはバークレイ/ガルプSWパルスワーム4”(カラー:モエビ)、オフセットフックはカルティバ/ツイストロック2/0、クッションビーズはプロズワン/ロックンビーズソフト、ブラスシンカーはプロズワン/クランクシンカーSP 3/8oz(11g)、リーダーにはシーガー/グランドマックスショックリーダー5号(24lb相当)を入れています。あとはシンカーの上、25cmほどの位置にシンカーストッパーを取り付けています。

このリグ、釣れる要素がぎっしりと詰まっています。

これまでの自分の経験測で割り出しているので、あとは迷いはありませんでした。

「最後はこれで決めてやる」、そう思いました。

 

 

そしてー。

この後、ついにその時はやって来たのです。

 

 

 

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