ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

新潟キジハタ探索記(6)

前回からの続き

キジハタとカサゴを筆頭に、マゴチ、ヒラメ、ホウボウ、イナダ、メバル、ベラ、マゾイと、合計9種目が釣れている当日。

釣りの時間も終盤に差し掛かり、残り僅かとなってきた頃合いです。

再び手にしているのはテールスピンジグ。

テールスピンジグは朝夕の光量の少ない時間帯での効果はそこまでではないものの、日中の陽が高い時間帯、つまりデイゲームにおいては非常に効果が高く期待が持てます。

その効果たるや、時にワームリグを凌ぐことも珍しいことではありません。

ソフトプラスチック質のワームでは演出しにくい、金属質なフラッシングの強さとブレードの回転水流がテールスピンジグの持ち味。

キジハタゲームでは、ブレード1枚でこんなにまで釣果に差が出ることがあるのか!?と垣間見る機会も多いことでしょう。

ブレード系ルアーやブレード系リグは、その日の条件下もありますが、同日中においても太陽の位置や晴れ具合など様々な要素が重なり合って「最も活躍する時間帯がある」ということはロックフィッシュゲームに取り組むうえで覚えておいて損はありません。

各種ルアーはその起源や発生要因が全部違っていて、それぞれに与えられた機能もまた異なるので、「その差異と使い分け方法」をきちんと理解して、自分なりのプランを立てて適材適所で順序よく投入していければその時、その時でハマっていくルアーやリグはおのずと見つかるものです。

 

本日の釣り。

テキサスリグ、スコーンリグ、テールスピンジグ、ジグリグと来て、最後は再びテールスピンジグ。

テールスピンジグを扱う場合、操作面でスピニングリールの方が私の場合は楽なので本日の釣行の締めくくりはスピニングタックルに託します。

デカいのを一発、最後にもう一度追加したいがためのセレクトです。

 

基本、投げられるだけ遠くに投げます。

着水したら一度だけ底を取ったら、すぐに底から上げてあとはボトムを意識せずにルアーを宙に浮かせたままにしてリールを巻いてルアーを動かし続けます。

任意のレンジより上に来過ぎたなと思った場合にはフォールを入れて元に戻し、レンジを細かく調整。

このあたりは「マーキング入りのPEライン」が釣りを分かりやすく、優しくしてくれます。

あくまでもレンジ維持に努めるのです。

ルアーが沈み過ぎだと感じたら、リールを一時的に早巻きして目的の層にレンジが上がったらそのままのレンジをキープできるようにロッドワークとリールを巻くスピード、ラインスラックの処理量を微調整しつつ一定層を保っていく。

慣れないと最初は難しいかもしれませんがこれが出来るか、出来ないか、の違いで結局のところ大きな差がつくのがサスペンドしたクロソイを釣っていくケースにも似た要素を持つ、キジハタの釣りです。

 

すると!

来た!

重くも力強くもあり、ギュンギュンと走るのでこれもまたデカい!

40cmオーバーは、ほぼ確定の引き。

 

海面上にはベイトフィッシュ(カタクチイワシ)の気配が見られなくなったため、先程よりはだいぶレンジは下がりましたが、それでもヒットレンジはボトムまで達していません。

水深22mのポイントに対して15mのラインでヒットしているから、ボトムから7m浮き上がっている状態でのヒットです。

本日最後になるであろう、3尾目の大物キジハタの手応えを噛みしめて寄せにかかります。

この強烈な手応えは本当にいい。

無我夢中になってファイト出来る魚。

 

無事にランディング。

①

至福の瞬間。

②

サイズもよく41cmと、先にキャッチしている45.5cm、43.5cmに続く本日、自身3尾目の40cmアップでした。

これに武田さんの45.5cmをプラスすると船中4人で4尾の40cmアップのキジハタが本日は釣れていることになります。

自分の釣りを締めくくる最後の魚が出たことで、一足早く私はこれにて納竿しました。

 

この匹数を多い釣果とみるか、少ない釣果とみるかは各々の育ってきた環境や自己の基準で異なるものに違いないですが、巷では時にマダイやヒラメの更に上を行く【幻の高級魚】とさえ形容されることも多いキジハタだけに、いつも必ずしも釣れる魚だとは限らないことを考えると、私からみても今回は凄く釣れているという実感がした日でした。

 

尚、キジハタの引きは35cmくらいから急に変わり、40cmに達すると別格の強さに変化していきます。

③

数も物凄く多いわけではなく、釣り方もそれ相応に難しい根魚ですが、それだけに釣れた時の達成感がハンパないものです。

 

キジハタは生まれて最初はメスとして生きのちに産卵に参加し、その後更に成長していく段階でメスからオスに変わっていく個体が多く出現していきます。

なので大きな魚はほとんどの場合オスなのです。

大きな魚ほどメスのように抱卵することもないので魚体としての全長はあっても、それほど太くはなりませんが「1キロ」あれば立派なオスであり、世の中一般的には大物という認識をされています。

 

もちろん、その後……45cm、50cm、60cmと更に成長していく個体(オス)も中には出現してくるわけですが、数はその分だけ限りなく少なくなるので、なにびとにもいつ・どこで・出会えるかなどはなかなか検討がつきません。

 

東北某所での63cm、四国某所での65cmというのが私の聞いた限りの「釣り」であげられたキジハタの最大サイズなのですが、いずれも船釣りで深い水深であることを考えるとルアーキャスティングで快適に釣りが出来るレンジにどこまでのサイズが留まれるかは不明確な点も残るものの、ショア&オフショアであっても水深20mくらいまでの浅場で、40cmオーバーも期待できる可能性がある釣り場が日帰り圏内や貴殿のお住まいの最寄にあるならば、キジハタに興味ある釣り人であれば楽しまない手はないでしょう。

 

キジハタはロックフィッシュアングラーだけでなく、エサ釣りの沖釣り師も好むし、ショアジギンガーも好むし、オフショアジギンガーも好む釣れてうれしい魚。

仮にマダイ釣りや青物釣りの外道で釣れたとしても毛嫌いされるケースはほとんどないに違いありません。

 

釣りあげるのが適度に難しく、希少性、幻の高級魚とさえ称される食味もまた絶品であり、どの部分を取ってもやはり皆、釣れてうれしい“釣り心”を満たしてくれる魅惑の魚。

夜、岸近くにいる個体を狙うベイトタックルでの接近戦はもとより、魚と人にかなりの距離が存在する場合の釣り場やデイゲームにおいても今ではロングスピン釣法の浸透により、ひと昔前に比べ格段とキジハタへの距離感は縮まりました。

私が本格的にキジハタを狙い出した10年前とは状況は明らかに変わってきています。

 

10年前の8月に富山県でのロケでキジハタを釣ったのが私のキジハタゲームの始まりでした。

SALTWATER2006年12月号

釣り雑誌「SALT WATER 2006年12月号」、“キジハタ探して東へ西へ”という企画でした。

10年ひと昔。

10年前、皆さんはどんなロックフィッシュを、どんなスタイルで狙われていましたでしょうか。

 

当時はキジハタを専門に狙うルアーアングラーも全国的に少なく、そして開示された情報も極めて少なく、専用タックルもほぼない頃でしたので、分からないことだらけで私も“手さぐり釣行”を繰り返していました。

10年前のロケで初めてのキジハタを手にした後も、この魚にはただならぬ将来性を感じ自分の中で追求しつつも、いつの日かロックフィッシュゲームのひとつのキャラクターとして十二分に成り立つように確立したいと思い、個人的に何度もキジハタのいる海には足を運びました。

A

B

しかし上記の理由からお世辞にも釣れる率は良いものとは言えず、思いのほか釣果も伴わなかったことの方が多かったので、昔はキジハタ釣りへの苦手意識すらありました。

 

(ちょっと昔の写真でお恥ずかしいですが…。)

C

D

なので、それまでの自己基準でしかなかったアイナメ釣り・ソイ釣りとは違うタイプの習性を持つ根魚であることをよく理解し、その難易度の高い釣り方を覚え、苦手意識を克服するためにその分たくさん研究して、練習して、キジハタならではの釣り方を模索し続けてきました。

E

キジハタに想いを馳せるあまり、時には見知らぬ土地で夜通し釣り続けたこともあります。

せっかく行った遠出の地でがっかりするくらい終始雨に降られ、ずぶ濡れになりながらも釣り続けたこともあります。

それでもめげずに「夢」と「情熱」と溢れる若さも一心に全力投球していたのです。

かつてはサクラマスの釣りもそうだったのですが、「釣れない釣り」を人並み以上に長く経験しているからこそ、ようやく願い通じた1尾の有難味をつくづく重んじられるし、今では手軽な釣り~希少魚に想いを託す釣りもまたそのどれもがそれぞれの魚釣りの良さである、と認識することが出来ています。

昔は特定のスタイルを基準とする釣りにどうしても偏っていたことも多かったのですが、キジハタと出会ったことで認識も大きく変わり、北~南まで、果ては海の向こうにいる海外の未知の根魚に至るまで、その魚、その魚に合った適切なアプローチをその都度深く考えるようになり、それぞれのターゲット毎に、今ではベイトタックル~スピニングタックル、フロロカーボンライン~PEライン、ソフトルアー~ハードルアーに至るまで、繊細さと豪快さを臨機応変に総動員しつつそれらを自在に使いこなせる技を身に着ける工夫をしています。

 

全国の釣り場、海外の釣り場で経験を重ねることで、「釣りの仕方」、「釣りの運び方」が次第に変わり自己の釣りを大きく成長させることにも繋がりました。

F

G

貴重な時間と一生懸命働いて手にしたお金を投じてもなかなかキジハタが釣れなくて苦しんだ昔の記憶も今となってはこれもまた良い思い出であり、なつかしい記憶のひとつです。

 

もちろん!

今でもそう易々とキジハタは釣れてくれなくて困ってしまう場合も多々あるのですが(笑)、それはそれで!その時さえも(釣れない時間さえも)昨今では思いっきり楽しんでいます。

 

今後のロックフィッシュゲームが進んでいく世界を、アイナメ・ホッケ・ソイ・カサゴ・カジカ、メバルなどと共にいま一度、楽しくしてくれるハタという存在。

④

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そんなハタ科の中でも中核を担うキジハタを狙った釣りは、かつて北のアイナメ、クロソイ、ベッコウゾイたちが辿った道のように今後もどんどん進化・発展していくことでしょう。

 

近年では中国・四国・関西などを筆頭にキジハタ放流事業に取り組む漁協が増えてきていることが報道でも時々取り上げられるようになってきました。

いずれも高付加価値のあるキジハタを養殖することで水産業界としては事業の収益性を高めようとする働きです。

その恩恵を受け、私たち釣り人に至ってもキジハタを狙って釣れる地域が少しずつながらも拡大してきているわけですが、その一方で人工種苗放流を行っていない限り元々の自然生息数ではそれほど多い魚ではないために、「魚の扱い」と「この魚への関わり方」には最善の良識と敬意を持って、今後もこのキジハタ釣りを【ニッポンのロックフィッシュゲーム全体】としても、永く、大切にしていけたらと切に願っています。

 

3月に入れば、早くは九州からキジハタ釣りが順にスタートし季節の進行と共に“キジハタ前線”もまた北上していきます。

⑦

今年も列島各地で素晴らしいロックフィッシュゲームに、キジハタゲームに、全国津々浦々の根魚釣り愛好家の皆さんが恵まれることを願ってやみません。

 

「新潟キジハタ探索記」【終】

 

 

スピニングタックル(テールスピンジグ用)

●ロッド:シューティンウェイSWS-702Lスイミントレーサー

●リール:ステラC3000HG

●ライン:シーガーTENYA0.8号

●リーダー:シーガーグランドマックスFX 5号

●スナップ:カルティバクイックスナップ♯2

●ルアー:テールスピンジグ20g、30g

●インナー:リトルプレゼンツ/ウェットトップ

●アンダー:リトルプレゼンツ/ウェットボトム

●パンツ:リトルプレゼンツ/SPリバーショーツ

●偏光グラス:ZEAL OPTICS/ENZO

●偏光レンズ:TALEXラスターオレンジ、 TALEXアクションコパー

★新潟県糸魚川市ボートロック船宿

彩波(高木船長)【受付番号025-566-3405】