ロックフィッシャー佐藤文紀

ロックフィッシャー
佐藤文紀
(さとうふみのり)
元祖・根魚ハンターとして、数々のIGFA世界記録及びJGFA日本記録を有し、「根魚釣りの専門家」として東北〜北海道を拠点に全国各地の根魚を追い続ける。
又、フラットフィッシュや大型トラウトの釣りにも造詣が深い。
2011年、自らがプロデュースするブランド、PRO’S ONEを立ち上げた。

キャッチアンドリリースのお願い

豊かな自然とグッドコンディションの魚を守るため、必要以上のキープは慎み、又、産卵前の個体やこれから大きく成長していく若魚は、ぜひともリリースを心掛けましょう。
釣り場環境への負担を最小限に抑えることで、次世代に渡り末永く楽しめることを願って―。

志、貫く流れ。~川と海の話~岩手県渓流釣行

本日から禁漁期間に入った渓流釣り。

①

例年、8月もお盆過ぎになると禁漁に入る前にせめて1回でも!と行きたくなるのが「渓流」というシチュエーションだ。

普段、海にばかりに行っていると真水の中で楽しむ釣り場に無性に行きたくなることがある。

余談ながら、小生の場合はナマズやライギョといった淡水魚の釣りが子供の頃から好きなように、渓魚の住まいへも足を運びたくなるのだ。

 

そこに難しい理由はない。

「釣り師」以前に、ただの“魚好き”(生き物としての魚が好きという意)がその根底にある。

むろん、渓流のフィールドに立ったとき大物や数釣りといった至極を求めることではなく、ただその場に釣りの格好をして立てるだけで今は十分満足している。

あまり上手くは言えないのだが“風景に同化する”と、でもいうのだろうか。

まぁ、しょせんは私とて釣り人の端くれ。欲を出したらキリがなくなるのは身をもってよく分かっている。

あくまで身の丈にあった付き合い方が出来れば今の私には十分なのだ。

 

それにしても、である。

釣友が「今日は35センチのヤマメを釣ってきた」と連絡をくれた。

35センチのヤマメ

添付されていたこちらの写真を見れば、確かに型の良いヤマメだ。

ヤマメの35センチは間違いなく、大物の部類に入る。

話を聞けば、これより大きい30後半、更には明らかに40センチを超えるスーパーヤマメを追わせることが出来たが、あいにくルアーを見切られてUターンされてしまって悔しい…と電話口から、ややドスの効いた声が聞こえてくる。

 

スーパーヤマメ、かぁ…。

 

その翌日はたまたま仕事が休みだったが、しばしあちらこちらと疾走しているうちに、たまってしまった業務を朝から片付ける作業に徹していたが、釣友の昨日の釣果がどうも印象に残り、頭の中は既に渓流へと駆け巡っていた。

 

35センチのヤマメを釣ったのは岩手県。

この時点にして時計の針は既に11時近くを指していた。

 

釣友が釣ったという川まで行くにはもう時間がない。どう考えても、今からでは時間的に遅すぎる。

 

そこで岩手県の南部方面に釣り場を設定。

それでも時間はかかるが、今から渓流釣りの支度をして行っても夕暮れまでには3時間ほどは釣りが可能だ。

 

たったの3時間。

たかが3時間。

 

それでもそこに果たせる目的があれば私は走る人間だ。

 

時間がないので、川はひとつに絞り込む。

最寄りの店で遊漁券を買い求め、その足で釣り場へ。

 

川は、思わぬ濁りだった。

②

“ささ濁り”程度かと思っていたが、水は茶色い。

 

見るからに「これはちょっと厳しいかなぁ…」と思ったが、わざわざこのために走ってきているものだから、手早くルアーを投げ込んでいく。

 

生粋の根魚釣り師の血が騒ぐのか。

磯に広がる白いサラシを見るとテキサスリグをブン投げたくなるように、渓の白泡の中に今は小さなミノープラグを投げ込んでいく。

 

程なくしてヤマメが喰うが、ルアーフィッシングの対象としてはちょっと小さ過ぎるサイズ。

 

その後、アブラハヤがミノーに掛かってきた。

まさかこの流れの中にアブラハヤがいるとは思わなかったが、それにもましてアブラハヤをルアーで釣ったのは初めてだった。

なんだか得をした気分。

 

少し川を登って行った先が最後のポイント。

暗くなる前には、この森の中を抜けださないと―。

 

慎重派のため、時間には余裕を持って行動するタイプの人間の癖なのだ。

 

一枚岩の裏側にミノーが入った。

チャッ!チャッ!と連続トゥイッチを入れるとグン!!と引っ手繰るようにヤマメが出てきて反転した。

③

23センチ。

お世辞にも「良い型ですね!」と誰も声をかけてくれそうもない大きさだが、貴重なプライベートな釣りの時間に出会える魚との対面は喜びもまた深い。

 

たっぷりと時間をとって、一等地を効率良く撃つことが出来れば、もしかしたらスーパーヤマメは出る可能性もあるのかもしれない(?)が、ここはひとつ身の丈にあった時間の付き合い方で満足としよう。

 

釣り場を後にし、街の中を走れば既に日は暮れていった。

秋の陽は短い。

それでもマイナスイオンをたっぷり浴びれる森の中の真水の釣りは「フレッシュウォーター」と言われる由縁だろう。

 

1尾のヤマメで満足できるか―。

そこに釣り人のスタンスが、いかなるものを垣間見るものであるとするなれば……。

私はどうだろう。

貴方はどうだろう?

 

春―。

④

あの1尾を毎年釣りたいがために、一心にサクラマスを追う私がいる。

大きな川の流れに身を任せる白銀の使者を釣る、という命題のもとに。

⑤

その憧れは尽きることなく、川を通り越してやがて“海”の向こうをも目指す。

 

そして今日、1尾のヤマメで心満たされた私がここにいる。

⑥

「ヤマメ」と「サクラマス」の話。

「春」の下流に、「秋」の上流の話。

「川」と「海」の話。

それは対義するものではなく、ひとつの物語だったりもする。

そう、ストーリーは己の中で繋がっていく。

 

「志、貫く流れ」。

太古から一貫して流れる、北上の大河のように。

⑦

 

本日から早10月。

渓流は、しばしのお別れの季節。

 

また来年!

今度は時間をたっぷり作って再訪しよう。

 

タックルデータ

●ロッド:トラウティンマーキスボロン TMBS-562L

●リール:ステラ2000S

●ライン:シーガービッグラン1号(4lb)

●スナップ:カルティバ クイックスナップ♯1

●ルアー:シュガーミノー50ES、Dコンタクト50

●フック:カルティバST-26TN

●シャツ:リトルプレゼンツ/SPサニードライシャツ

●パンツ:リトルプレゼンツ/SPリバーパンツ

●ウェーダー:リトルプレゼンツ/SP3 AQ ZIPウェーダー

●ジャケット:リトルプレゼンツ/ライトウェーディングジャケットⅡ

●ベスト:リトルプレゼンツ/スローハンドⅡ+(Plus)

●シューズ:リトルプレゼンツ/ミッドストリームWDシューズ ピンフェルトソール

●ヘッドウェア:リトルプレゼンツ/ストリームレインハット

●偏光グラス:ZEAL OPTICS Vanq

●偏光レンズ:TALEXイーズグリーン